草薙の研究ログ

英語の先生をやってます。

英語教育系学会における会員の年齢構成

学会における年齢構成問題

 私は,昨年共著者らと執筆した『英語教育のエビデンス』という本の中で,何度か英語教育を担う人材の年齢構成について触れました。簡単にいってしまえば,学会などの集団をサンプルにすると,若手会員が相対的に少なく,中堅・ベテランの方が会員数が多いという状況になっているということです。そしてこの傾向は年々強まっていきます。もちろん,別にこれは何も英語教育だとか,英語教育系学会に固有なことではなくて,日本におけるもっとも一般的な年齢構成の必然的な帰結だと思います。
 このような視点をもって,各学会・研究会は若手支援やら会員の拡充についてさまざまな取り組みを行っています。私も上記の本において,多少若手支援の取り組みについて情報を提供しました。

「草薙くん,いや学会はむしろ発展しているからね?」

 そこで驚いたことに,このような私の(そして大勢の)見方とは異なり,現在も英語教育系の学会は会員数が増えており,むしろ順調に発展しているという反論を少し前に頂きました。いわく,当該の私の記述が,「過度に悲観的な見方を持たせようとして根も葉もないことを扇動的に書いている」といった種のご批判です。
 まず,第一に重要なことは,「会員数が仮に増えていこうとも,それはボリュームのある世代が現状において退会されていないだけで,大量退職が起きて急激に会員数が下り始める」ということです。要は,重要なのは会員数ではなくて,繰り返し書いているようにその年齢構成なのです。
 もう一つは,やはりデータを基に議論するのがよろしいかということです。ちょうど,素晴らしいことに中部地区英語教育学会(CELES)が,今年度,設立50周年記念誌*1
を発行されたようです。関係の先生方,大変お疲れさまでございます。中部地区英語教育学会(2022)では,pp.244 - 248に,1971年から2021年度までの一般会員数,学生会員数のデータを所蔵しています。これを打ち込んで,可視化してみます。

中部地区英語教育学会の一例

 可視化するとこうです。縦軸が会員数,横軸が年代です。青が一般会員数,緑が学生会員数です。年度によって報告されてなくてデータがないときがあります。

中部地区英語教育学会の会員数推移

 たしかに,一般会員数は右肩上がりに見えます。それに学生会員数も横ばいに見えます。
 しかし,学生会員比率はどうでしょう。

学生会員比率の推移

 これは右肩下がりのように見えますよね。2010年代に入ってからは10%を切っていますね。

扇動的?

 扇動的といういわれは受け入れるとしても,それほど根も葉もないことを思いつきでいっているわけではないということがわかるグラフかと思います。

*1:中部地区英語教育学会(2022)『設立50周年記念誌』中部地区英語教育学会.