全国英語教育学会紀要掲載論文が"effect"をタイトルに使う確率
この学会はほんとうに効果(effect)が好きだなあという印象
わたしは全国英語教育学会という学会の会員でして,この学会は会員が2,000人弱(たぶん…)で,英語教育の中では比較的大きな学会になっている。この学会の紀要はAnnual Review of English Language Education in Japanというもので,長いのでARELEなどと略されていわれているよう。毎年20本台くらいの論文を掲載していて,今は30号くらい。国内の英語教育研究の動向を知るために,代表的な資料とされることも多いよう。
わたしもちょっと最近あることが気になっていて,それは「英語教育の研究ってやたらと効果(effect)っていうことば使うじゃんね~」ということ。論文のタイトルは,The effect of ~,Effects of ~ ,Effective ~といったのがた~くさん♪
大修館書店の『英語教育』という雑誌に,英語教育時評というコーナーがあって,縁あって寄稿させてもらっている。昨年あたり,「英語教育の学会は効果の話ばっかりで違和感を感じている」なんて書いたりしたのだけど,「学会にあまり参加しないくせにわかったようなことをいうな」といったお叱り(をやわらかくされた表現)をいただきました…。確かに印象でものをいうのは悪い。本当に学会では効果の話ばかりなのかを真剣に調べたことがなかったので,ちょっと調べようと思う。思ったらやってみる。
調べてもほらやっぱ効果ばっかじゃんね!
ここの学会の紀要ARELEはJ-Stageで公開されているので,ちょっとプログラムを書いて2010~2018年分の論文の英語タイトルを集めた。英語タイトルに,"Effect","Effects",および形容詞の"Effective"が使われている数を集計した。
年 | 使ってない | 使った |
2010 | 18 | 6 |
2011 | 21 | 5 |
2012 | 20 | 6 |
2013 | 12 | 9 |
2014 | 17 | 5 |
2015 | 20 | 8 |
2016 | 14 | 6 |
2017 | 19 | 6 |
2018 | 12 | 7 |
使う率の年ごとの推移は,こんな感じ。
この比率をベイズ推定すると,こんな事後分布になる。(実際には年を変量効果にしているが話を妨げるので省略)
事後期待値は,確率に換算すると.38。HDIは[.26, .53]。下限をとっても4本に1本くらいはEffectをタイトルに使いそうだ!
4本に1本の論文のタイトルに効果がつくレベルなのに,よく効果を語っているとはいっちゃだめなのかな。
青い目の人形の現存率
青い目の人形
青い目の人形ってのは,1927年に日米友好のために,アメリカから日本に送られた人形のこと。当時の日米間は緊張状態にあった。日本人の移民がアメリカでの職を奪っている,という見方の下で,日系人排斥の機運が高まっていた。いわゆる黄禍論みたいな。それで,「こんな時代だけど,むしろこんな時代だからこそ仲良くすべきだ」っていうような話になった。
で,奥ゆかしいことに「仲良しのしるしなら人形だろ」ってことで,莫大な数のアメリカン・ドールを日本中に配ったわけ。それらの殆どは地方の小学校とか教育施設などに。
わーい。アメリカから青い目の人形が送られてきたぞ。
…この話,小さいときから個人的に何百回も聞かされたものだ。それだけでなく,当時送られたという実際のアメリカン・ドールを何度も何度もこの目で見たことがある。というのも,この青い目の人形,たまたま私が通学していた小学校に現存していた。私が対面したドールには名前があって,「ミミー」といった。ミミーちゃんの顔はこちらのサイトから確認できる。そうだ,ミミーだよ。ミミー。Long time no see!
現存率
ちょうど今年で93年も経ったし,この青い目の人形の所在の多くはわからなくなってしまっているそう。そういや,この若くてピッチピチの私が見たのも25年くらい前の話だもんな。先週,東京のホテルで寂しく年越しをしていたら,酒の勢いかなにかの謎の作用で,なぜかこの青い目の人形の話を不意に思い出した。その後も夢に出てきてくれた。「不意に思い出す」ってのは予想も納得もいかないのがポイントだけど,あまりにも不意だよなあ。そういや,青い目の人形ってなんだったんだろう?ついに化けて出たのか?そもそもどれくらい現存しているんだろう?
ま,でも気になって調べてみたら,先述のWikipediaにとてもすばらしくまとめられていた。以下の表はWikipediaの転記(だから信憑性もWikipediaに準ずるだけでなく私の転記ミスの可能性もある)。
都道府県 | 寄贈数 | 現存数 | 現存率 |
北海道 | 643 | 26 | .040 |
青森県 | 220 | 10 | .045 |
岩手県 | 263 | 18 | .068 |
宮城県 | 231 | 10 | .043 |
秋田県 | 190 | 12 | .063 |
山形県 | 205 | 12 | .059 |
福島県 | 323 | 17 | .053 |
茨城県 | 246 | 11 | .045 |
栃木県 | 213 | 5 | .023 |
群馬県 | 142 | 19 | .134 |
埼玉県 | 178 | 12 | .067 |
千葉県 | 214 | 11 | .051 |
東京都 | 568 | 11 | .019 |
神奈川県 | 166 | 12 | .072 |
新潟県 | 418 | 12 | .029 |
富山県 | 150 | 6 | .040 |
石川県 | 205 | 3 | .015 |
福井県 | 152 | 1 | .007 |
山梨県 | 129 | 5 | .039 |
長野県 | 286 | 28 | .098 |
岐阜県 | 235 | 2 | .009 |
静岡県 | 253 | 7 | .028 |
愛知県 | 349 | 9 | .026 |
三重県 | 194 | 9 | .046 |
滋賀県 | 135 | 4 | .030 |
京都府 | 262 | 8 | .031 |
大阪府 | 429 | 4 | .009 |
兵庫県 | 373 | 11 | .029 |
奈良県 | 144 | 5 | .035 |
和歌山県 | 177 | 1 | .006 |
鳥取県 | 107 | 3 | .028 |
島根県 | 182 | 2 | .011 |
岡山県 | 238 | 3 | .013 |
広島県 | 326 | 5 | .015 |
山口県 | 200 | 5 | .025 |
徳島県 | 152 | 1 | .007 |
香川県 | 108 | 1 | .009 |
愛媛県 | 214 | 6 | .028 |
高知県 | 187 | 1 | .005 |
福岡県 | 259 | 3 | .012 |
佐賀県 | 98 | 1 | .010 |
長崎県 | 214 | 2 | .009 |
熊本県 | 241 | 2 | .008 |
大分県 | 182 | 4 | .022 |
宮崎県 | 131 | 1 | .008 |
鹿児島県 | 209 | 0 | .000 |
沖縄県 | 63 | 0 | .000 |
とにかくデータが出たら見せてみろ,っていう世の中の圧力なので,都道府県別の現存率を地図で塗り分けるとこう。
全体としては,約3.16%ということね。このデータに二項分布を仮定してベイズ推定すると,確率pの事後分布はこんな感じ。
そうか。そうだよな。3%くらいしか残されていないのね。
電子板書はCalmly Writerで
授業をする際に,電子的にその場で板書したりすることを個人的に電子板書と呼んでいる。emacsやAtomといった適当なエディタを開いてやることも多いけど,何分学生にとっては見にくい。
最近Calmly Writerという無料のWebAppを知った。これ本当に素晴らしい。
好きなところは
- Markdown言語をサポートしているところ
- Markdownをリアルタイムで表示できるところ
- UIが非常にシンプル
- ダークモードにトグルできる
- フルスクリーンモードにトグルできる
- ファイルはGoogle Driveと連携できる
- キーボードショートカットが多い
素晴らしい。電子板書で求める要件のすべてを満たしている
関係の数と三角数
2人いれば,2人の関係は1つ。3人いれば3つの関係。4人いれば6個の関係,5人いれば10の関係がある。
総当たり戦の数もいっしょ。2人いれば1試合,3人いれば3試合,4人いれば6試合,5人いれば10試合だ。
これを数列だと考えると,
という見たことあるような数列。今週奇しくも2回出会った。
これは,三角数に似ている。三角数は,
だから,三角数より一個ずれているみたい。三角数をとすると,なので,この数列(をとすると)は,ということ。もっとわかりやすくすると,というかんじ。
入試問題などにも出るみたい。階差数列の単純な問題として。
関係の数,というとなんか曖昧なんだけど,グラフ理論を考えると視覚的にわかりやすい。無向グラフがあって,Vの要素数がnのとき,このグラフが完全グラフになるEの要素数がこの数列。
三角数との関係は,完全グラフの隣接行列を考えるとピンとくる。三角数の定義通り,辺の中にある点が同じ正方形になっていて,その和がエッジ数であることがわかるし,増えていく列の中にある1の数がになってることから,階差数列であることもわかる。
これ,組み合わせと同じ。要素がn個ある集合から,要素を2個選ぶ組み合わせは,なので,やはり,。一般に,三角数の方がメジャーなので,とするよう。
ちなみに三角数の方は,それこそ無数に色んなところに出てくる。パスカルの三角形の3列目にも出てくる。
オンライン整数辞典という素晴らしいサイトがあって,この数列のページももちろんある。
最近導入したウェブアプリメモ
ウィーナーのサイバネティックスの広い定義
ウィーナーの『サイバネティックス』を読むとやっぱなんか当時の北米の知的雰囲気があってワクワクする。こういう古典って読んでみるとやる気出るね。
特に,岩波文庫版の訳本(池原他訳)で,日本語版へのあとがきのところ…
…今日,わたしはそれをこう述べたいと思います。 われわれの状況に関する二つの変量があるものとして,その一方はわれわれには制御できないもの,他の一方は我々に調節できるものであるとしましょう。そのとき制御できない変数の過去から現在にいたるまでの値にもとづいて,調節できる変量の値を適当に定め,われわれに最もつごうのよい状況をもたらせたいと望みがもたれます。それを達成する方法がCyberneticsにほかならないのです。―『サイバネティックス』(岩波文庫版訳本, p. 5)
これすばらしい。なんというかその包括性の大きさにやられる。こんな包括的なことをこんなに明確にいえるのかと。
そして自分がやりたいことは間違いなくこの範疇に入る。